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ひな祭りと行事食の関係
3月3日はひな祭り。ひなあられやちらし寿司など、華やかな行事食が食卓に並びますが、蛤(はまぐり)のお吸い物も、ひな祭りの代表的なメニューの一つです。それにしても、なぜひな祭りに蛤なのでしょうか?由来や背景について調べてみました。
はまぐりは縁起の良い貝だった
はまぐりがひな祭りの行事食となったのは、平安時代の貴族の遊び「貝合わせ」に由来すると言われています。
「貝合わせとは?」
- 蛤の貝殻の内側に花鳥や人物などの美しい絵を描き、裏返して並べ、同じ絵柄同士を合わせる遊び。
- 『源氏物語』にも登場する、平安貴族の雅な遊戯の一つ。
蛤の二枚の貝殻は、同一個体のもの以外は決して合わないため、夫婦和合や貞操の象徴とされてきました。
そのため、ひな祭りや結婚式の膳に供されるようになったと考えられています。さらに、江戸時代の享保年間(1716~1736年)、八代将軍・徳川吉宗がこの言い伝えに注目し、婚礼の祝膳に蛤の吸い物を取り入れたとも言われています。
また、古くからひな祭りの日には「磯遊び」と呼ばれる行事が行われていました。家族や仲間で海辺に出て飲食を楽しむ風習があり、そこで採れた貝を神様に供え、皆で食べて祝う習慣が蛤のお吸い物に繋がったとされています。
日本最古の料理記録に登場するはまぐり
ひな祭りの行事食として欠かせない蛤の歴史は非常に古く、縄文時代まで遡るとされています。
「蛤」の語源と歴史
- 「はま(浜)のクリ(石の意)」=「浜栗」 という説が有力。
- 縄文時代から日本人に好まれ、『日本書紀』(720年成立)にも登場。
- 景行天皇五十三年の条では、磐鹿六鴈命(いわかむつかりのみこと)が天皇へ「白蛤(うむぎ)の膾(なます)」を献上し、それを天皇が賞味した記録が残る。
これは日本最古の料理記録とされ、蛤が長い歴史の中で食文化に深く根付いていることがわかります。
また、江戸時代に入ると、東海道・桑名の焼蛤が名物となり、「その手はくわなの焼蛤」という言葉が流行するほどの人気を博しました。
はまぐりの栄養価と健康効果
蛤は、味だけでなく栄養面でも非常に優れた食材です。
はまぐりの栄養素と効能
- タンパク質:健康な体を維持するための重要な栄養素。
- ビタミンB12:貧血予防や神経系の健康維持に不可欠。
- ミネラル(亜鉛・鉄分):免疫力向上や貧血対策に効果的。
- コハク酸・タウリン:肝臓の働きを助け、疲労回復をサポート。
また、16世紀に明で編纂された薬学書『本草綱目』には、 「肺を潤し、胃を開き、腎を増し、酒を醒ます」と記されており、健康維持や二日酔い対策にも良いとされています。
特に、蛤は煮て調理すると旨味成分が煮汁に溶け出すため、お吸い物や鍋で楽しむことで栄養を余すことなく摂取できます。
まとめ:ひな祭りにはまぐりを食べる理由
ひな祭りの膳に蛤のお吸い物が欠かせない理由をまとめると、以下のようになります。
- 貝合わせの遊びに由来し、夫婦和合・貞操の象徴とされたため。
- 江戸時代には徳川吉宗が婚礼の祝膳に取り入れたため。
- 古くからの磯遊びの風習が影響しているため。
- 縄文時代から食され、日本最古の料理記録にも登場するほど長い歴史があるため。
- 栄養価が高く、健康や美容に良いとされているため。
4月頃までが旬とされる蛤。ひな祭りはもちろん、春の時期に伝統の味を楽しんでみてはいかがでしょうか?
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