「大切な試験の前には、縁起のいい食べ物を食べたい」
「験を担ぐって、そもそもどんな意味なの?」
「受験や資格試験の前にできるゲン担ぎには何がある?」
人生には、結果を出したい『ここ一番』の場面があります。
高校・大学などの入学試験だけでなく、資格試験、検定、採用試験、昇進試験など、試験は一年を通してさまざまな場面で行われます。
一生懸命準備してきたからこそ、本番が近づくと、
『できることは全部やっておきたい』
『少しでも縁起のいいものを取り入れたい』
と思うこともあるでしょう。
そんなとき、日本では昔から『験を担ぐ』『ゲン担ぎをする』という考え方が親しまれてきました。
カツを食べて『勝つ』を願ったり、昆布の『よろこぶ』という言葉に願いを重ねたり。
食べ物に意味を持たせ、未来の良い結果を願う文化は、日本の暮らしのさまざまな場面に残っています。農林水産省も、昆布を『よろこぶ』、れんこんを『先の見通しがよい』とするなど、食べ物に願いを重ねる文化を紹介しています。
そこで今回は、千葉県生まれの元プロ料理人であり、現在は九十九里浜で海と向き合う現役漁師の視点も交えながら、
1)験を担ぐ意味
2)ゲン担ぎという言葉の由来
3)なぜ試験前にゲン担ぎをしたくなるのか
4)合格を願うゲン担ぎの食べ物
5)縁起のいい食べ物としての蛤
6)試験の日だけではなく『初物』で験を担ぐ考え方
7)願いを込めて食べるという日本文化
…について分かりやすくご紹介します。
目次
1)験を担ぐ意味とは?
まず『験を担ぐ』という言葉から見てみましょう。
読み方は、
『げんをかつぐ』 です。
デジタル大辞泉では、験を担ぐことについて、物事の良い前兆・悪い前兆を気にすることという意味で説明されています。
また『験』という言葉そのものにも、
・しるし
・効果
・縁起
・前兆
といった意味があります。
そのため、
『今日は験がいい』
『験が悪いからやめておこう』
『大切な試験だから験を担ぐ』
といった使い方をします。
『験担ぎ』も意味はほぼ同じで、ちょっとした出来事や行動に良い前兆・悪い前兆を感じ、結果を願うことを指します。
大切なのは、験担ぎをしたから結果が保証されるということではありません。
最後に結果を決めるのは、やはりそこまで積み重ねてきた勉強や準備です。
それでも本番を前に、
『ここまで頑張ってきた。あとは力を出し切ろう』
と気持ちを切り替える一つのきっかけとして、自分なりのゲン担ぎを持つのも日本らしい文化の楽しみ方ではないでしょうか。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
2)『ゲン担ぎ』のゲンはどこから来た?
では、なぜ『験』を『げん』と読むのでしょうか。
辞書では『験を担ぐ』は『縁起を担ぐ』から転じた言葉ではないかと説明されています。
また、今回参考にした記事では、江戸時代に言葉を逆さにする『倒語』が流行した中で、
『縁起』
↓
『ぎえん』
↓
『げん』
へ変化していったという説も紹介されています。
ただし、語源については一つの説として捉えるのが適切でしょう。
現在では、
・験を担ぐ
・げんを担ぐ
・げんをかつぐ
・ゲン担ぎ
・げんかつぎ
など、さまざまな表記が使われています。
『げんをかつぐ漢字は?』
と聞かれたら、
『験を担ぐ』
…と覚えておくと分かりやすいでしょう。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
3)試験前の験担ぎは「最後のひと押し」
受験や資格試験の前になると、いつも以上に縁起を気にする方もいます。
いつも使っているペンを持っていく。
試験会場へ向かう前に神社へ参拝する。
大切な人からもらったお守りを持つ。
そして、縁起のいい食べ物を食べる。
参考記事でも、試験前のゲン担ぎの代表例として『勝つ』に通じるカツ料理や、『よろこぶ』に通じる昆布など、言葉に願いを重ねた食べ物が紹介されています。
ここには、とても日本らしい感覚があります。
食べ物そのものに試験の点数を上げる力があるわけではありません。
しかし、
『明日は勝負の日だから、カツを食べよう』
と家族が食卓を用意してくれる。
その一皿には、
『頑張ってね』
『大丈夫だよ』
『力を出し切っておいで』
という応援も一緒に込められています。
ゲン担ぎの食べ物とは、単に縁起がいいだけではなく、誰かの願いや応援を食卓に表すものでもあるのかもしれません。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
4)試験前に取り入れたい縁起のいい食べ物
日本には、言葉や形から縁起を担ぐ食べ物が数多くあります。
代表的なものを見てみましょう。
①カツ
受験や試合前のゲン担ぎとして、特に分かりやすいのがカツです。
『カツ=勝つ』
という語呂合わせから、勝負の日の食事として親しまれています。今回の参考記事でも、験担ぎグルメとしてカツ丼やカツカレーが紹介されています。
ただし、試験当日の朝に普段食べ慣れない大量の揚げ物を食べる必要はありません。
験担ぎをするなら、自分の体調や普段の食生活も大切にしたいところです。
②昆布
昆布は、
『よろこぶ』
に通じることから、縁起のいい食べ物として正月などの祝いの食卓に用いられてきました。
農林水産省でも、昆布巻きには『よろこぶ』という語呂から縁起を担ぐ意味があり、不老長寿や子孫繁栄への願いを込める場合があると紹介されています。
試験であれば、
『合格して、みんなでよろこべますように』
そんな願いを込めることもできます。
③れんこん
れんこんにはたくさんの穴があります。
そのため、
『先の見通しがよい』
という意味を重ね、縁起物としておせち料理にも使われています。
これから先の道が開けますように。
努力した先に良い未来がありますように。
試験や新しい挑戦を控えた人にも、意味を重ねやすい食材です。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
5)合格へのゲン担ぎに、縁起物の蛤はいかがでしょうか?
そして、九十九里浜で蛤を扱う私たちからご紹介したい縁起のいい食べ物が『はまぐり』です。
はまぐりは、昔から祝いの食卓で親しまれてきました。
その理由は、二枚の貝殻にあります。
はまぐりは対になっている貝殻同士がぴったり合い、ほかの貝殻とは合わないことから、『夫婦円満』や『良縁』の象徴として受け継がれてきました。
農林水産省でも、ひな祭りには女の子が良縁に恵まれ、幸せになれるよう願いを込めて、はまぐりのお吸い物をいただく文化が紹介されています。
つまり、はまぐりは本来『受験合格のための定番食材』というわけではありません。
ここは大切にしたいところです。
しかし、もともと良いご縁や幸せを願って食べられてきた縁起物だからこそ、
『大切な試験を控えた家族に、縁起のいい食事を用意してあげたい』
というときに、自分たちなりの験担ぎとして取り入れてみるのはいかがでしょうか。
例えば試験前日の食卓なら、
①はまぐりのお吸い物
②はまぐりの酒蒸し
③はまぐりと野菜を合わせた鍋
など、素材を活かした食べ方があります。
元料理人としては、試験前だからと特別に豪華にするよりも、食べ慣れた料理に縁起の良い一品を加えるくらいがおすすめです。
家族みんなで、
『明日、頑張っておいで』
と食卓を囲む。
その時間そのものが、受験生にとって大切な応援になるのではないでしょうか。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
6)初物を食べることも、日本ならではの験担ぎ
験を担ぐ食文化は、試験だけではありません。
日本では古くから『初物』も縁起の良いものとして親しまれてきました。
茂丸株式会社の過去の記事では、
『初物を食べると寿命が七十五日延びる』
という言い伝えを入り口に、旬の食材やはまぐりに込められてきた縁起について紹介しています。
科学的に初物を食べれば寿命が75日延びるという意味ではなく、季節の最初の恵みをいただき、新しい季節を迎えられたことを喜ぶ日本の言い伝えとして楽しみたいものです。
試験、新しい資格への挑戦、就職、転職。
人生で新しい一歩を踏み出すとき。
そんな節目には、旬のものや初物を食べて、
『ここからまた新しく始めよう』
と験を担いでみるのもよいでしょう。
【初物を食べると寿命が延びる?旬の味覚「はまぐり」に込められた運と縁起のはなし】
https://shigemaru99.com/news/column/867/
初物とは何か、はまぐりがなぜ縁起物として親しまれてきたのかについて、こちらの記事でも詳しくご紹介しています。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
7)九十九里浜の海の恵みに、願いを添えて
九十九里浜で現役漁師として海に出ていると、人間の思い通りにならないことの多さを感じます。
潮の流れ。
風。
水温。
天候。
どれだけ準備をしても、自然はこちらの都合には合わせてくれません。
だからこそ、できる準備をして、その上で良い結果を願う。
そう考えると、『験を担ぐ』という文化は、海と向き合う漁師にもどこか通じるものがあります。
もちろん、願うだけでは何も変わりません。
試験であれば勉強する。
仕事であれば準備する。
漁師であれば海を読み、道具を整える。
まずは人事を尽くすことが大切です。
そのうえで、
『今日も良い一日になりますように』
『努力してきた力を発揮できますように』
と少しだけ願いを込める。
茂丸株式会社では、日々変化する九十九里浜の海を見極めながら、その時期の状態に合わせた天然はまぐりをお届けしています。
元料理人として、美味しく食べていただく方法まで伝えることも、私たちの仕事だと考えています。
もしご家族や大切な方が試験を控えているなら、いつもの『頑張れ』という言葉に加えて、縁起のいい食べ物を囲む食卓で応援してみるのも素敵ではないでしょうか。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
まとめ|験を担ぐのは、未来に願いを込める日本らしい文化
験を担ぐとは、良い前兆や悪い前兆を気にしながら、良い結果を願って行動することです。『験』には縁起や前兆といった意味もあります。
カツに『勝つ』。
昆布に『よろこぶ』。
れんこんに『先の見通し』。
そして、はまぐりには『良縁』や『夫婦円満』。
日本では昔から、食べ物の名前や姿に意味を重ね、幸せを願ってきました。
試験に合格できるかどうかは、験担ぎだけで決まるものではありません。
それまで積み重ねてきた勉強や努力が何より大切です。
しかし、家族が縁起のいいものを食卓に用意して、
『ここまで頑張ったんだから、あとは力を出しておいで』
と送り出す。
その一皿には、食べ物以上の意味があります。
高校・大学受験だけでなく、資格試験や検定など、挑戦の機会は一年を通してあります。
大切な試験を控えた日。
合格への願いを込めた自分なりのゲン担ぎとして、九十九里浜の海の恵みである蛤を食卓に取り入れてみてはいかがでしょうか。
美味しい食事を囲み、大切な人の挑戦を応援する。
そんな日本らしい『験担ぎ』を、これからも食卓で楽しんでいただけたらと思います。

